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棚田学会
Rice Terrace Research Association

                  棚田学会賞 

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棚田学会賞
第16回石井進記念棚田学会賞(令和元年度)
1.授賞者
(1)大中尾棚田保全組合(長崎県長崎市)
(2)NPO法人棚田LOVER’s(兵庫県神崎郡市川町)

2.業績名及び授賞理由
(1)大中尾棚田保全組合
業績名:都市住民との協働や交流による集落維持・活性化
授賞理由:大中尾地区は、長崎市の北西部、東シナ海を望む旧外海(そとめ)町の神浦(こうのうら)地域の中心部から扇山に向かって広がる山間部に所在する。現在約8ha、450枚に及ぶ当地域の棚田は、1746 年 に大村藩主が知行開きをしたとされ、神浦川上流の山奥を取水源とする約4.2kmにおよぶ大井手水路とともに現在まで受け継がれてきた。棚田での米作りや大井手水路保全組合の活動は「何気ない日常」であったが、平成 10〜12年度に棚田地域等緊急保全対策事業に取り組み、棚田や水路の整備を行ったことで、大井手水路と棚田が地区内で再認識されるようになった。また、平成 11 年に大中尾棚田が「日本の棚田百選」に選定され、グリーンツーリズムの取り組みや棚田の魅力の地域外への発信を通じて、地元では棚田に対する意識が変化し始めた。
 平成14年に、大井手水路保全組合を母体として、42名の会員からなる大中尾棚田保全組合を設立し、長崎県で初めての棚田オーナー制度を導入し、棚田は自分達だけのものではなく、多くの人で守っていくものとの考えに変わり、地域外の力を借りる稲作に転換していった。大中尾の生産者と都市住民が協働して田植え、草取り、草刈り、稲刈り、稲架け、稲降ろし、脱穀を行い、同年に1組4名で始まったオーナー制度は、ピークの平成 27 年には 38 組695名に拡大しており、そのリピーター率は 82%に及ぶ。現在も40組前後、500名前後が契約している。平成 20 年からは、組合がリピーター13名を新規オーナーへの農業を指導する体験指導員に選定している。
 地域の宝である大中尾棚田を広くPRするため、平成14年から平成21年まで案山子コンテスト、平成18年から平成20年までフォトコンテスト、平成19年から現在に至るまでは棚田火祭りを開催し、都市住民との交流を深めている。さらに、平成14年から毎年、地元の小中学生、学童保育、保育園児に棚田での稲作体験の場を提供し、平成25年には棚田トラストにも取り組み、長崎市内4大学から約100名の学生ボランティアの参加を得て、地区外の若い世代へも棚田と稲作の必要性と素晴らしさを伝えている。
 大中尾には、家族連れ、大学生、海外留学生、老若男女多彩な人々が、棚田オーナー制度、農業体験等で毎年延べ1,000人程訪れ、地元高齢者からの稲作文化の伝承、現代の子ども世代の文化や若者文化、海外文化の交流が行われ、大中尾に集う多彩な人々の交流が深まっている。
 これらの取組みが評価され、平成29年度豊かなむらづくり全国表彰において、大中尾棚田保全組合は農林水産大臣賞を受賞した。同組合の活動は、多くの人々の思いを一つに束ね棚田を守る保全活動の模範的な姿を具体的に提示するもので、その社会的意義は極めて高く、棚田学会の理念とも一致する。よって、棚田学会賞を授賞するに相応しいものと認められる。

(2)NPO法人棚田LOVER’s
業績名:美しい棚田を未来の子どもたちにつなぐ13年間の地域活性化の取り組み
授賞理由:棚田100選に選ばれている兵庫県美方郡香美町うへ山の約3.1ha、39枚に及ぶ棚田は、農家の高齢化が進むと共にイノシシ等の獣害に悩まされ、耕作放棄地が増加して存続の危機に瀕していた。この美しい棚田を未来の子どもたちに継承していくため、2010年3月30日に設立されたNPO法人棚田LOVER’sは、任意団体時の2007年から13年間にわたり、保全活動・利活用を進め、地域の活性化に大きく貢献してきた。地元香美町の観光協会の会長や自治会長を歴任する棚田LOVER’sの宮脇寿一理事が活動の中心となり、棚田地域の人々と共にお米を育て、棚田LOVER’sとしては季節ごとに草刈りや電気柵の設置、片付けなどの作業をサポートしてきている。
 2010年からは、棚田LOVER’sの永菅裕一理事長が生まれ育った兵庫県神崎郡市川町に活動の場を広げ、上牛尾集落の約3反の棚田を借り受けてお米を育てはじめ、「親子で一緒にコメ育て体験!」などのイベントを企画運営し、年間1000人以上の来場を得て、地域活性化に貢献している。
 棚田LOVER’sの活動が県内で広く知られるようになり、棚田を訪れる人々が増加したことにより、両町の棚田地域は活気を取り戻してきている。さらに2014年には、永菅裕一が市川町内に所在する古民家を購入して移住し、地域の祭りや毎月の集まり、集落の共同作業にも参加するとともに、2015年からは地元の自治会や市川町と共催で、町の将来を見据え、婚活イベントにも取り組むなど、地元との連携を密にしている。同イベントは、参加カップルが延べ46組(そのうち結婚まで漕ぎ着けたカップルが3組)という実績を残し、現在も継続しており、市川町に新たに定住した若者たちが伝統文化の担い手となるよう、人材育成にも力を入れている。
 地元上牛尾集落の福岡孝義さんは、集落外の棚田LOVER’s関係者の伝統行事「虫送り」への参加(2012年〜現在)が、村をより盛り上げると期待を寄せている。こうした活動に触発され、上牛尾集落では移住を促進する協議会も立ち上がり、移住者は現在15名以上に達した。これをさらに応援するため、棚田LOVER’sは2019年、地元に子ども食堂をオープンし、2020年には永菅裕一が民宿の運営を開始して棚田LOVER’sと連携している。2011年より毎年開催している棚田LOVER’sフェス(棚田deコンサートを発展させ改称したもの)では、2019年は40団体の出店、約400名の来場を得た。今年も10月18日に棚田LOVER’sフェスを開催する予定である。
 棚田LOVER’sの取り組みは、棚田地域活性化の手本としてその社会的意義は極めて高く、棚田学会の理念とも一致する。よって、棚田学会賞を授賞するに相応しいものと認められる。

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